情熱の赤い薔薇

午前中から友人に会い、近況を話しながら喫茶店でランチを食べた。この友人は本当にいつも笑って話を聞いてくれるから、ついつい喋りすぎてしまう。

しかもこちらが話した内容をよく覚えてくれる。対して自分はというと、聞いた話はあまり覚えられないし、自分が話したことさえあまり記憶が定かではないという有り様。前にもその話聞いたなと思わせていたら申し訳ない。

 

ランチのあとデイリーヤマザキサーティワンアイスクリームカップアイスを買って、公園で食べた。数年前にデイリーヤマザキで見た時より、種類が増えていた気がした。気のせいかな?

 

それから誕生日プレゼントにと、本をプレゼントしてくれた。人にセレクトしてもらった本を読むのは、特別なかんじで、いいよね。

あたしンちの母・・・!好きだから嬉しい。あたしンちといえば、昔、祖母と一緒に見ていたとき、あたしンちの父の顔について「口がなくて面白いねぇ!」と祖母が延々笑ってたのを覚えている。祖母のツボだったのか・・・。

 

『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んだ

『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ

この本は2016年に韓国で発表されベストセラーになり、その後日本でも話題になった。自分はファッション誌など雑誌を滅多に買わないかわりに美容院では読むので、髪を切られながら雑誌で紹介されているのを見たし、Twitterでも流れてきた。2019年には映画化したらしい。そして、2021年になりやっと読んだ。

ソウルメイトが昨年夏に会ったとき、読んだ?と聞いてきたのを思い出し、図書館で借りた。はやく彼女に感想を伝えたい。

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82年生まれの韓国人女性が結婚し子どもを一人もって、精神科の患者になるまでの人生を回顧する内容である。女性が人生の中で対面する困難や差別が描かれている。

筑摩書房のサイトを見てみると、キム・ジヨンという名前は韓国の82年生まれに最も多い名前であるらしい。その仕掛けのとおり、ほとんどの人が経験した(あるいは見かけたこと)がある内容である。それは隣国の日本でも同様。

 

読んだ感想を簡単にまとめると、今まで感じてきたちょっとした不快な経験や「そういうものだ」と思っていたことの可笑しさが一気に襲い掛かってくるような感覚を味わった。

高校生のとき、生理中の自分が使った後のトイレの便器を見た父親が「ねえ、血が出てたみたいだけど、病気か?」と聞いてきたことを、ありありと思い出してしまった自分をコーヒーを飲んで落ち着けた。

学校生活、進路、男性からの嫌がらせ、就職、仕事、結婚、夫婦生活・・・とにかく、ほとんど全てにおいて”女性である”ことが関わる。結婚観や職業選択については、当時より状況は良くなっているものの、夫婦間での労働バランスなどはまだまだ難しい問題だ。

これを男性の知人たちに読んでもらったら、「だからってどうすればいいの?」という感想が聞けると予想しているが、どうでしょう?それから、母親がこれを読んで何を思うのか?

 

特に印象に残ったのは、キム・ジヨン氏の姉が、最初に志望していた大学ではなく、母親が勧める大学のほうに進路変更した場面だ。

母親は、悪化していく景気のなかで安定して働ける(そして女性でも子育てしながら働きやすい)教師になってほしいという思いと、自分のようになりたい職業を諦めないでやりたいことをやってほしいという思いをどちらももっており、結局教師になる道を選んだ娘を送り出して泣いた。

この母親の良いところは、娘たちへの態度が一貫しているところだと思う。長女にも、次女にも、やりたいことをやって自分で働けと言った。たとえ父親が、就職活動がうまくいかない娘に「このままおとなしくうちにいて、嫁にでも行け」と言ったとしても。

 

もう一つ印象に残っているのは、女性が出産・育児のための休暇や休業を取得することに関するジレンマだ。キム・ジヨン氏の初めての上司は、会社で唯一の女性課長で、出産後も一ヶ月で復帰して男性並みに働いていることを誇りとしていたが、出産や育児の会社の制度を使わなかったことで後輩の権利まで奪ってしまうことになったと申し訳なく思っている。

キム・ジヨン氏も後に妊娠したことで、出勤時刻を30分遅らせる制度を活用できたのだが、それを「30分の丸もうけ」と言った男性社員に腹を立て、制度を使わなかった。その選択も、制度があるのに制度を使えないような雰囲気に加担しているかもしれない。

 

上記の場面はごくごく一部分であり、「女性ばかりが!」とは言わないまでも、女性は様々な場面で葛藤やジレンマ、迷いに追われている。時には男性が、時には女性が、そのような女性たちをさらに追いつめている状況が発生している。

 

「だからってどうすればいいの?」という問いへの、自分なりの考えは以下の通りだ。

自分自身の経験上、迷ったり、罪悪感をもったり、先がわからない状況に置かれるというのは、非常に精神を摩耗することを知っている。ベストな答えをストレートに出せないとしても、女性たちの迷いや不安に寄り添うような態度をとることができたら良い。

また、女性が選択した答えについて、事情を知りもしないのに推測でものを言わないこと。結婚することも、子どもをもつことも、仕事をすることも、勉強することも、その理由やそれに至るまでの過程は様々なのだから。

 

著者のチョ・ナムジュさんと、大好きな『フィフティ・ピープル』の訳者でもある斎藤真理子さん、そして娘の進路にもあまり口出しせず見守ってくれている母親に最大限の感謝を込めて、未来への期待と少しの警戒心をもって今日も生きていこうと思う。

 

1・2月で読んだ本

年始に「月2冊以上、本を読む」という目標を立てた。1、2月を経て、目標通り継続できているので一旦振り返りたい。今回は5冊。

 

①『命売ります』三島 由紀夫

主人公は、自殺しそこなった男・羽仁男。始まりから終わりまでの、羽仁男の変化が面白い。「命売ります」と新聞に広告を出すような人間には、まともなことが起こらないだろうと予想ができるけど、その予想を上回る驚きの展開があった。たしか帰省の飛行機の中で読んでいたら、「エッ」と声を出して驚いてしまった場面があった。

命売ります (ちくま文庫)

 

②『噛みあわない会話と、ある過去について』辻村 深月

収録されている4作すべて女性を取り巻く人間関係の話だった。どれも、昔の出来事が今の状況に繋がって、ドキっとしたりハラハラしたりするストーリー。

自分自身にも身に覚えがある類の、人との関係の中で生まれる緊張が続き、小説の話なのにもかかわらず肝を冷やす。

噛みあわない会話と、ある過去について

 

③『もうひとつのワンダー』R・J・パラシオ

映画『ワンダー 君は太陽』を夏に観たから、読んでみた。児童書『ワンダー』のスピンオフ作品で、映画の主人公オギーのクラスメイトたち3人の視点からのストーリー。

恐らくこの作品を読んだ人の多くが、ジュリアンのおばあちゃんの話が印象に残っていると思う。子どもにも子ども向けの易しい言葉を使わず、自分のファッションを貫くカッコいいおばあちゃんが、困難を乗り越えようとするジュリアンにだけ明かした昔話が感動的なのだ。

それから「優等生キャラ」のシャーロットがスクールライフをがんばる話は、(おそらく)元優等生の自分も共感できる部分が多く、懐かしい気持ちになった。

もうひとつのワンダー

 

④『鍵のない夢を見る』辻村 深月

またもや辻村作品、そして今度も女性を取り巻く5つの短編集。

出てくる人々に対して「うわあ、どうしてそんなことするかな!」と言いたいが、どれも現実に存在しそうな人物なのが怖い。たしかすべて犯罪が関わっている話だったから、全体的に暗くドロドロとした感じで、読み終わったころには疲労感がある。好き嫌いあるかもしれぬ。

鍵のない夢を見る (文春文庫)

 

⑤『暗いところで待ち合わせ』乙一

記憶が定かではないけど、数年前に友人に勧められて買った本だったと思う。申し訳ないが読み止しのまま本棚に置いていたので、この度発掘して読んだ。

読み直してみて、なるほど昔の自分が読み終えなかった理由がわかった。盲目の女性と、彼女の家に潜む男の物語で、本当に「静か」なストーリーだから、なんだか眠くなるのだ。

だけど眠気に抗いながら読み進めていくと、なかなか面白い展開があった。

暗いところで待ち合わせ